中小企業

良い面接官は“温度”がいい──会社の未来を決める温度面接術。

公開:2025年12月03日
更新:2025年12月03日

面接官の言葉そのもの以上に、求職者が強く受け取っている要素があります。


それが、面接の場で感じる空気感や印象です。

どれほど丁寧に説明を行い、業務内容を分かりやすく伝えたとしても、求職者は面接官の表情や声のトーン、応対の間合いといった要素から、その企業の雰囲気を総合的に判断しているといわれています。

「この会社は安心できそうだ」「この人たちとであれば働けそうだ」
そうした感覚が持たれる企業では、応募意欲が維持されやすく、選考辞退の抑制にもつながる傾向が見られます。

しかし、制度や働きやすさに強みがあったとしても、面接の場で適切な印象が伝わらなければ、その魅力は十分に認識されません。

現在の採用市場では、条件面だけでなく、採用プロセスを通じて伝わる印象が企業選択に影響を与える局面が増えています。面接は、単なる情報提供の場ではなく、企業の在り方を体感してもらう重要な機会といえます。

本稿では、面接官の振る舞いや応対がなぜ企業の評価に影響するのか、また、求職者に伝わりやすい印象とは何かについて、「温度」という視点から整理していきます。

第1章 なぜ“温度”が今、面接で最も重視されるの

出典:内定辞退率/マイナビ「中途採用状況調査2025年版」
上記図の通り、近年の内定辞退率は、2022年以降からわずかながら上昇傾向が続いています。加えて辞退理由には以下のようなものも含まれています。

出典:選考を辞退した理由/2023年卒学生就職モニター調査

2023年卒学生就職モニター調査における「選考を辞退した理由」では、「志望度が高い企業から内々定を得た」といった前向きな理由がある一方で、

・面接官と一緒に働きたいと思えなかった
・面接官の態度に違和感を覚えた
・人事担当者の対応に不信感を持った

など、面接時の対応を理由とした辞退も確認されています。
このことから、面接における応対や姿勢が、選考継続の可否に一定の影響を及ぼしていると読み取れます。

面接では、制度説明や待遇条件といった情報提供はもちろん重要です。
しかし、それだけでは伝わらない要素として、面接官の話し方、表情、候補者への向き合い方といった日常的な振る舞いから滲み出る空気感があります。

仮に条件面で魅力的な企業であっても、面接の場で冷淡な印象を与えてしまえば、候補者は企業の本来の良さを十分に受け取れず、「自分には合わないかもしれない」という感覚を持つ可能性があります。

面接は単なる説明の場ではなく、候補者に企業を体感してもらう場です。
面接官が示す傾聴姿勢や余裕のある対応は、候補者の不安を和らげ、企業への信頼感を高めます。
このような積み重ねが応募意欲の維持につながり、結果として選考辞退の抑制にも寄与すると考えられます。

第2章:面接官の“温度”が候補者の心を動かす理由

面接官は、求職者にとって企業を判断する重要な接点です。

どれほど社内環境が整っていても、面接官の対応が冷たく受け取られれば、その魅力は十分に伝わりません。

そのため、企業の印象は「面接の場における応対」を通じて形成されます。

出典マイナビ 2024年卒大学生活動実態調査

就職先の意思決定においては、仕事内容や待遇だけでなく、採用過程で接する社員の雰囲気やコミュニケーションの印象が重要な判断材料となっていることが読み取れます。

マイナビの最新調査によると、就職先を決定した理由として「説明会で興味を持ち、選考を経て志望度が上がったから」が50.0%で最も多く、次いで「その企業の社員の雰囲気や人柄が自分に合っていると感じたから」が49.9%と、ほぼ同水準で続いています。この結果から、学生が企業を選ぶ際、選考プロセスで感じた人や雰囲気が、志望度の形成に大きく影響していることが分かります。

新卒採用では、実際の配属先の上司とは異なる社員が、面接や説明会を担当するケースも少なくありません。
そのため学生は、入社後の職場環境を十分に把握できないまま、限られた接点をもとに企業の印象を判断する状況に置かれています。

結果として、面接や説明会で接した一人の社員の話し方や姿勢、コミュニケーションの取り方が、企業全体の雰囲気として受け取られやすくなります。
企業側が誠実に採用活動を行っていたとしても、候補者が直接感じ取れるのは、制度や社風の全体像ではなく、その場での応対から生まれる印象に限定されがちです。

このような傾向は新卒採用に限らず、中途採用においても共通しています。
パーソル総合研究所の調査においても、企業と求職者の間でギャップが生じやすい項目として「コミュニケーションの雰囲気」が継続的に上位に挙げられています。

これらの調査が示しているのは、採用活動における人を通じた印象が、企業選択において無視できない影響力を持っているという現実です。

第3章:良い面接官が持っている“温度”とは何か

良い面接官に共通するのは、話術の巧みさや高度な質問力そのものではありません。

重要なのは、候補者が面接を通じて「この会社であれば安心して働けそうだ」と感じられるような、一貫した姿勢やコミュニケーションの在り方を備えているかどうかです。

出典:人事のミカタ「面接後の志望理由」

求職者が企業に好印象を抱く場面では、論理的な比較だけでなく、面接時に受け取った感覚的な印象が影響することが少なくありません。
前述の調査においても、「面接官の人柄・雰囲気・身なり」といった要素が、選考への向き合い方や志望度に関係していることが示されています。

企業側が制度や魅力を丁寧に言語化して伝えていたとしても、候補者は面接官の振る舞いや空気感を通じて、企業全体の印象を形成する傾向があります。
その結果、面接官から受け取った印象が、企業理解の大きな判断材料となる場合もあります。

では、候補者が「この会社は自分に合いそうだ」と感じる面接官には、どのような共通点があるのでしょうか。
次章では、実際の採用現場で多く見られた傾向をもとに、良い面接官に共通する要素を整理していきます。

① 最初の数十秒で安心感をつくる

面接の冒頭は、求職者が最も緊張しやすい時間帯です。
声のトーンを意識的に柔らかくし、表情を穏やかにするだけでも、場の空気は大きく変わります。

・名乗る際はややスピードを落とす
・「本日はお時間を頂き、ありがとうございます」と一言添える

こうした配慮により、求職者は「丁寧に向き合ってもらえている」と感じやすくなり、緊張が和らぐ傾向があります。

② 相手のペースに合わせる意識を持つ

求職者の話すスピードや間合いに意識を向けることで、面接全体の対話がスムーズになります。

・早口の方には、ややテンポを合わせる
・ゆっくり話す方には、間を取りながら進める

「話しやすい」「自分のペースを尊重されている」という感覚は、安心感につながりやすい要素の一つです。

③ 質問は一方的に投げず、余白を残す

温度のある面接では、質問の伝え方にも配慮があります。

・「差し支えなければ教えてください」
・「お考えをお聞かせいただけますか」
・「少し考えてからで大丈夫です」

このような一言を添えることで、質問が圧迫感のあるものにならず、自然な対話として受け取られやすくなります。

④ 相槌は理解を示すために使う

相槌は、話を促すためだけでなく、理解しようとする姿勢を伝える手段でもあります。

・「おっしゃる通りですね」
・「そのようなご経験だったのですね」

落ち着いた相槌は、求職者に「きちんと話を聞いてもらえている」という印象を与え、安心して話せる雰囲気づくりに役立ちます。

⑤ 説明は簡潔さと分かりやすさを意識する

説明が長くなり過ぎると、内容が伝わりにくくなる場合があります。
次の点を意識することで、理解しやすさと誠実さの両立が図れます。

・結論を先に伝える
・専門用語は必要に応じて言い換える
・話すスピードを少し落とす

丁寧で分かりやすい説明は、企業への信頼感につながりやすくなります。

⑥ 面接の締めくくりまで気を配る

面接の終わり際は、全体の印象を左右しやすい場面です。

・「本日はお時間を頂き、ありがとうございました」
・「お話を伺えてよかったです」

こうした一言が添えられることで、面接全体が丁寧な体験として記憶に残りやすくなります。

まとめ

ここで挙げたポイントはいずれも、特別な面接スキルを前提としたものではありません。
日常的なコミュニケーションの中で意識できる小さな配慮の積み重ねが、面接の印象を大きく左右します。

面接官一人ひとりの向き合い方が、結果として企業全体の印象につながっていく。その前提に立つことで、「温度のある面接」は、より現実的な取り組みとして実践しやすくなります。

第4章:温度を高める“面接の整え方”──今日からできる実践方法
 

良い面接官は、専門性に加えて、面接の場で伝わる印象や雰囲気も大切にしています。
この印象は、説明を重ねるだけで形成されるものではありません。

表情や間の取り方、姿勢、声のトーンといった要素が重なり合い、面接官個人の人柄として候補者に伝わることで、企業に対する安心感や信頼感が生まれやすくなります。

出典:「マイナビユーザーアンケート」

面接は、少しの意識と事前準備によって、多くの人がより良い印象を伝えられる場へと整えていくことができます。
面接の場で伝わる雰囲気は、求職者の安心感や応募意欲に影響を与える要素の一つです。

候補者が面接で受け取る印象は、話の内容に加えて、「どのように話すか」「どのような姿勢で向き合うか」といった点から形成されます。
たとえ短時間であっても、落ち着いた対応や配慮のある進行がなされていれば、「丁寧に対応してもらえた」「前向きに働けそうだ」と求職者に感じてもらえることがあります。

一方で、意図せず話すスピードが早くなったり、表情が硬く見えたりすると、「余裕がない」「忙しそう」と受け取られてしまう場合もあります。
その結果、企業全体の印象が実態以上に冷たく映ることもあります。

では、こうした印象の差は、どのような点から生まれるのでしょうか。
次章では、採用現場で意識されてきた観点をもとに、「温度が伝わる面接の整え方」を整理してご紹介します。

一つひとつは些細な行動であっても、求職者にとっては安心感の積み重ねとなり、企業を選ぶ際の重要な判断材料となります。
採用の場で伝わるこうした印象は、企業の姿勢や向き合い方を、候補者に確実に伝えていきます。

第5章:温度面接がつくるのは、“未来の信頼”


採用の現場では、言葉だけでは説明しきれない印象が生まれる場面があります。
たとえば、面接室に入った際、面接官が落ち着いた表情で名乗り、柔らかな声で「本日はお時間を頂き、ありがとうございます」と伝える場面です。
その一言によって、求職者の緊張が和らぐことがあります。

面接の場において、入室直後のやり取りは、企業に対する第一印象を形づくる重要な時間です。
この短い時間にどのように迎えられるかによって、求職者が感じ取る企業の印象は大きく左右されます。

企業の魅力は、書類や設備といった情報だけでなく、面接官を通じて伝わる向き合い方や振る舞いにも表れます。
面接で受け取った印象は、「この会社は丁寧に人と向き合っているか」という判断につながり、選考を継続するかどうかを考える際の一つの材料となります。

このように、面接で生まれる安心感や違和感は、単なる選考結果以前に、企業への信頼の入口として機能します。
採用がより難しくなる中で、制度や条件だけでは企業の姿勢が伝わりにくくなっている今、
「どのように候補者と向き合うか」という視点が、これまで以上に重要になっています。

一方で、こうした採用の向き合い方を組織として整えていくには、意識や進め方を整理する必要があります。

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面接という限られた時間に、企業の姿勢や人の温度が丁寧に伝わる組織には自然と人が集まり、組織全体の活力も高まっていきます。採用環境が厳しさを増す中、自社の魅力をどのように届けていくかは、今こそ見つめ直す必要がある重要なテーマといえます。

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