中途採用

“安く使う時代”は終わり?~日本の高齢者低賃金労働を世界と比べて見えてくる経営の未来~

公開:2025年11月20日
更新:2025年11月20日

私たちの社会に深刻な影響を及ぼしている問題の一つが「高齢者の低賃金労働」です。
単に「老後も働ける社会」ではなく「働かざるを得ない社会」になっていることが今の日本の現実です。

高齢者が低賃金で働くことは経済的困難だけでなく、健康や生活の質の低下、ひいては社会全体の持続性にも影響します。
再雇用後に賃金が半減するケース、責任は同じでも給与が下がるケースなど「経験を安売りする構造」が根付いているのです。

本稿では日本の現状をデータで確認し、海外との比較を通じてこの問題を俯瞰します。
そして経営者や採用担当者にとって「今後の雇用戦略を再設計するためのヒント」となる提案を示します!

第1章 【日本の現状】データで見る“働き続けざるを得ない高齢社会”

厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」によると

☑65歳までの雇用確保措置を実施している企業:99.9%
☑70歳までの雇用確保措置を実施済み企業:27.9%
☑高齢者就業率(65~69歳):50.3%(初めて50%を超過)
☑70歳以上:18.1%

一見、「生涯現役社会の実現」が進んでいるように見えます。
しかし裏側には“働かないと生活できない高齢者”の増加という現実があります。

以下のリクルートワークス研究所のデータによると60代では転職後に年収が10%以上減少した人が5割超であることがわかります。
定年再雇用や転職をしても給与アップの可能性は低く、キャリアの最後で所得が急落する構造が見て取れます。

出所:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」

さらに介護業界などでは高齢者自身が低賃金労働を担う現象が発生しています。
介護職員の不足(2025年には約32万人不足見込み)を埋める形で高齢者が体力的に厳しい職場に流れ込んでいます。

これらは全て「社会が高齢者の経験を正当に評価していない」ことの表れと言えます。

第2章 【国際比較】オランダ・スペイン・フランスの改革から学ぶ

オランダ

企業リスクを軽減し、個人の自律を高める制度設計

オランダは年金制度を「確定給付型」から「確定拠出型」へ転換しました。
企業が年金債務を抱えずに済むため、経営の自由度は上がりましたが高齢者自身が資産形成を学び、自律的に老後設計を行う必要が生じました。

学べる点

  • 企業に依存しない「自己運用型のキャリア設計」を支援する教育・リスキリングの必要性。
  • 定年後も“雇われる”より“働き方を選ぶ”方向への政策転換。

スペイン

所得に応じた年金負担と生活コストに合わせた給付

物価スライド制の再導入と高所得者の保険料引き上げにより、所得格差に応じた社会的再分配を強化しました。 これにより「高齢者の生活保障」と「制度の持続可能性」を両立させています。

学べる点

  • “社会保障の公平な再配分”を進め、低賃金で働く高齢者の生活保障を強化する。
  • 税・社会保険料の構造改革が不可欠。

フランス

年金受給年齢の引き上げと職業別制度の最適化

フランスでは受給年齢を62歳から64歳へ段階的に引き上げ、職業別の年金補完制度により、労働内容に応じた給付を維持しました。
重労働職に従事する高齢者には柔軟な早期退職制度を設けるなど“職務リスクに応じた年金制度”を導入しています。

学べる点

  • 「職務給」導入の流れと親和性が高い。
  • 職種に応じた賃金・退職制度を明確化することが公平な賃金設計のカギ。

第3章 他国の成功事例をどう日本に活かすか
“シニア人材の再評価モデル”の提案

海外では高齢者を“保護対象”ではなく、“再戦力化できる人材”として扱う流れが進んでいます。
この章では第二章でオランダ・スペイン・フランスなどの成功事例をヒントに日本で実現可能な3つのアプローチを紹介します。

①「自立型キャリア再設計」モデル(オランダ型

オランダの確定拠出型年金制度は企業依存ではなく「個人の自立」を促す仕組みです。
この発想は日本企業の「生涯雇用」文化を再定義するヒントになります。

日本での応用:

  • 企業が高齢社員に対して「キャリア自立支援プログラム」を提供
     (例:リスキリング講座、ライフプラン設計支援、フリーランス転換支援)
  • シニア社員が社内外で活躍できるパラレルキャリア制度の導入
  • 社員の自己運用スキルを高めるため、金融教育・投資教育を社内福利として展開

💡 経営者への示唆
「雇い続けること」ではなく「活躍し続けられる仕組み」を提供することが次世代経営の鍵。

②「公平性×柔軟性」の年金・雇用改革モデル(スペイン型

スペインのように物価スライド制を導入し、高所得者が多く負担する社会的再分配の仕組みは 高齢者の生活安定を支えるだけでなく、社会全体の不満を抑える構造を作っています。

日本での応用:

  • 政府・自治体との協働で「シニア就労支援ファンド」を設立
  • 企業はシニア雇用に対して賃金補助や税優遇を受けられる仕組みを整備
  • 特に中小企業では成果連動型報酬制度(ジョブ型+プロジェクト報酬)の導入が有効

💡 採用担当者への示唆
高齢者を「低コスト要員」ではなく「補助金活用による戦略的人材」として再定義する視点が必要。

③「職務別リスク調整」モデル(フランス型

フランスの年金制度の特徴は職務の負荷やリスクに応じた差別化です。
重労働職種には早期退職・特別給付などの制度が整っており、 “体力ではなく経験で貢献する働き方”が制度的に支えられています。

日本での応用:

  • 介護・建設・物流など“肉体負荷が高い職種”で年齢別の職務設計・報酬区分を導入
  • 経験を伝える“指導職ポジション”を新設し、メンター給与制度を採用
  • シニア人材の知識共有をKPI化し、「生産性ではなく貢献価値」で評価する仕組みを導入

💡 現場管理者への示唆
“働けるうちは働く”から、“働き方を設計して活かす”への転換が必要。

④「企業の競争力」への波及効果

これらのモデルを導入する企業では

🌟若手と高齢者の知識交流による生産性の向上
🌟離職率の低下
🌟高齢社員による顧客対応品質の向上

 などの効果が期待できます。

高齢者雇用は「社会貢献」ではなく「経営戦略」です。
熟練社員を適正に評価する仕組みを整えることは企業のブランド価値も高めます。

第4章 【企業視点で考える】高齢者の“経験価値”を賃金に変える戦略

ここで注目すべきは「高齢者を安く使うこと」は企業にとっても損だという点です。
経験豊富な人材がモチベーションを失えば、生産性は下がり、若手育成も滞ります。

改革提案❶定年制・年功賃金の見直し

  • 定年を段階的に引き上げ、能力に応じた再雇用を推進。
  • 年功序列ではなく、職務・成果・知識に応じた賃金体系へ転換。

改革提案❷継続雇用と柔軟な働き方

  • 65歳以降も契約社員や業務委託など多様な雇用形態を用意。
  • 健康状態や家庭事情に合わせた勤務時間・リモートワーク制度の整備。

改革提案❸労働環境の改善と技術支援

  • 介護ロボット、AIスケジューリング、業務自動化などで身体負担を軽減。
  • 職場内でのリスキリング(特にIT・安全管理分野)を支援。

改革提案➍介護・医療人材へのキャリアパス設計

  • 若者を介護職に導く教育プログラムを強化し、
    “福祉=低賃金”のイメージを払拭する。

外国人労働者との協働体制を整備し、多文化共生型の労働市場を構築。

第5章 【まとめ】高齢者を「守る」から「活かす」時代へ

高齢者の低賃金労働問題は、もはや“個人の問題”ではありません。
それは日本社会全体の構造課題であり、同時に企業経営の「未来への投資テーマ」です。
欧州各国が制度改革で高齢者の自立・再評価を進める中、
日本企業にも“経験を活かす仕組み”を設計することが求められています。
再雇用や定年延長は「コスト増」ではなく、
知識と信頼を次世代に継承する経営戦略に変えられる時代です。

企業ができる次の一歩
自社の高齢者雇用ポリシーを“生涯活躍型”にアップデートする

職務給・再雇用制度の見直しにより、公平な評価軸を整える

シニア層を「教育者・伝承者」として配置し、組織の知見を循環させる

経験人材を“再戦力化”する研修・キャリア支援を実施する

これらの取り組みは、単なる福利厚生ではなく、採用ブランディングそのものを強化します。
「シニアを活かせる企業」は、若手からも“安心して長く働ける会社”として見られるからです。

㈱採用戦略研究所からのご提案

高齢者を含む多世代人材が共に活躍できる職場づくりをテーマに
以下のような支援を行っています。
🔹主なサポート内容
シニア人材の採用戦略設計(再雇用・再配置・ミドル採用)

職務給/スキルマップに基づく賃金制度の再設計支援

リスキリングを活用したシニア社員育成プログラムの開発

“生涯現役”を支えるキャリアプラン研修・面談設計支援

採用ブランディング・企業広報のコンサルティング

高齢者の雇用は「社会的責任」ではなく「経営力の源泉」です。
経験を再評価し、持続的な組織づくりへと転換することが、
企業の未来を支える最強の採用戦略になります。

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㈱採用戦略研究所では 人材育成の仕組みづくりに加え、
「年齢やキャリアに関わらず“本当に欲しい人材を集める”」ための採用戦略をトータルでご提案しています。
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